教育徒然

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情報モラル本に足りぬもの

 この時期は来年度の教科書の見本が出そろい、各々の学校が教科書や副教材の選定作業で忙しくなる。教科「情報」もまた同じであり、気付くと手元に情報モラルの副教材が集まったので、どこをどのように使おうかと思考をめぐらしていた。どの教材に関してもそれぞれに特色があり、見ていて面白い点もあるのだが、切り口は大体似通っている点は否めない。また何冊か読む中で、何かが足りないという感覚も拭いきれなかった。では一体何が足りないのかを探っていこう。

 使用した教材は以下の3点である。




実教出版 「事例でわかる 情報モラル 改訂版

教育図書出版 第一学習社 「ケーススタディ情報モラル

日本文教出版 「見てわかる情報モラル


* 補足:この3点見本として渡されたものである。ただ第一学習社については、2年程前のものであり、最新の中身については確認できていない。



 
 さて、これら3冊の内容に共通するものとしては情報モラルについて事例紹介がなされていることと、分かりやすい説明の例として4コマ漫画で表している点が挙げられる。若干コマの並べ方が違う程度で、見開きの左上に4コマ漫画が掲載され、それ以外を詳細な説明にあてている。

 そして、この事例を分かりやすく述べるための4コマ漫画にこそ一致する点がある。全く同じ内容というわけではないが、「誹謗・中傷」について書かれている例を取り上げたい。「誹謗・中傷」を取り扱う時の4コマは大体次のような流れであることが多い。

① 自分の気に入らない人物がいる。もしくは気に入らない出来事があった。

② ネット上の掲示板やブログ等にその内容を非難交じりで書く。

③ 自分が書いた内容に対して周囲または直接誹謗中傷した相手からのアクションがある。

④ 周囲のアクションの結果、自分の行動を反省。もしくは書かれたことで取り返しのつかないことが起こる。

 こういった形である。似たような4コマ漫画としてインターネットユーザー協会(MIAU) 「インターネットリテラシ読本「“ネット”と上手く付き合うために」」の中にも掲載されているものがある。これはテーマが誹謗中傷ではなく「ネットは匿名ではない」という題にそった内容であるが、流れとしてはほとんど同じような形になっている。

 これに何か問題があるかというと別に問題があるわけではない。ただ如何にも教本的な内容であり、自己意識を高めて「誹謗中傷を行わないようにしましょう」という指向が見える。分かりやすくしようとした結果であり、ネットに初めて触れるものにとって必要な知識を伝えるための方策として最善であろう。道徳的内容としての側面を持つ「情報モラル」であれば、この取り扱い方にも納得できる。

 では、これで「誹謗中傷」を扱う内容を終わらせていいのかというと疑問が残る。「誹謗中傷」に限らず今なぜ世間で情報モラルを扱ってほしいという要望が出ているのかをよく考えてほしい。ネットについてよく知らない人たちのネットに対する危険思想だけで「情報モラル」を扱ってほしいというのではなく、ネットをよく使っている青少年たちでさえ「子どもたちには情報モラルを学ばせるべき」と言っている理由はどこにあるのか。

 それはよく使っている人物だからこそ出てくる「ネット上の不快な行動をやめてほしい」という苦情にある。ようは「情報モラル」を弁えない人物が自分たちに迷惑をかけることに怒り、呆れ、苦しみ、悲しみを覚え、その行動をやめてほしいのだ。そしてネットをよく使っている人物にとって、「他人の迷惑をかける人物」は「他人がどう思っているかを考えない人物」だと考えている。ゆえに「情報モラル」で取り扱ってほしい内容とは、「ネットをよく使う人物が、迷惑行動を行った人物に対してどう思っているか」であり、それを具体的に伝えてほしいのだ。

 そうなると話の筋が大分変ってくる。本当に何も知らない初心者向けに今の情報モラル事例集を渡すのは問題ない。しかしネットを使う人物では当たり前の内容を第三者視点で語られているようで、物足りなさを感じるのではないかと私は思うのだ。ゆえに今の4コマをそれぞれの立場別に描いた描写を入れるのが今後の在り方としてふさわしいのではないだろうか。先ほどの「誹謗中傷」の例で見てみよう。

 
① 自分の気に入らない人物がいる。もしくは気に入らない出来事があった。
   → これは誹謗中傷を行う側の感想である。

② ネット上の掲示板やブログ等にその内容を非難交じりで書く。
   → この行為によって誹謗中傷を行い、加害者の立場となる。

③ 自分が書いた内容に対して周囲からのアクションがある。
   → 加害者の視点であり、被害の可能性について初めて気づかされる。

④ 周囲のアクションの結果、自分の行動を反省。もしくは書かれたことで取り返しのつかないことが起こる。
   → 加害者の反省。もしくは加害者の心の動揺について。

 こう見るとやはり一方的な視点で構成されている。一部に被害者のことについて書かれているが、もう少し被害者がどう思っているかを強調してもいいのではないかと思わされる。そこで次のような対比4コマ漫画で「誹謗中傷」を表してみよう。


 誹謗中傷を行う加害者側

① 気に入らない行動をされる → ② 誹謗中傷を書く → ③ 周囲のアクション → ④ 被害者の様子

 誹謗中傷された被害者側

① 何らかの行動を行う → ② 陰からの妙な目線 → ③ 誹謗中傷されたことを知る → ④ 被害者の落ち込み・悲しみの描写



 このようなそれぞれの立場で何が起こり、どう思われるか、視点を限定することで、より情報モラルの意義を感じ取ることが出来るのではないだろうか。

 また不正アクセスの取り上げ方にも同じようなことが言える。大抵の場合、不正アクセスの事例説明は、たまたまパソコンの周囲に貼ってあったパスワードを友人が見つけて、悪戯を仕掛けられて迷惑するといった内容になっていることが多い。これは不正アクセスの被害者側の視点が主であり、困惑や被害を強調され、パスワードの管理などについても言及されるものである。

 しかし、不正アクセスはもっと加害者の視点をクローズアップする必要がある。以前のべたように不正アクセスをする段階は4段階に分けられ、その葛藤などを書くことが望まれる。



不正アクセスの被害者視点

① ID・パスワードの放置 → ② 作業の続き及びログアウト → ③ 別日にログイン → ④ 不正アクセスの被害発覚

不正アクセスの加害者視点Ⅰ

① 放置されたパスワードの発見 → ② ログインできるかどうか試す → ③ ログイン成功 → ④ 成功したことへの不安・葛藤

不正アクセスの加害者視点Ⅱ

① 放置されたパスワードの発見 → ② 別場所で確信をもってログイン → ③ データ改ざん・コピー → ④ 被害者をバカにする態度



 こういった比較4コマ漫画があってもいいのではないかと思う。現在特に問題となる著作権の話についてもそれぞれの立場の視点を独立させることでより充実した内容になるのではなかろうか。炎上やステルスマーケティング、フィッシングなど取り扱える事例が多い分、被害者、加害者または第三者視点と立場は変わるだろうが、それを明示することは重要だと考えられる。しかしそういった事例を出している本がなかなか見当たらないという事は、あまりやってはいけないということなのかもしれない。そういった点はいくつかのサンプルを通して調べていきたい。

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まとめtyaiました【情報モラル本に足りぬもの】

 この時期は来年度の教科書の見本が出そろい、各々の学校が教科書や副教材の選定作業で忙しくなる。教科「情報」もまた同じであり、気付くと手元に情報モラルの副教材が集まったの...

まとめwoネタ速neo 2012-06-18 (Mon) 19:14


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